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「はたらく島人」 (株)やわら香 | 屋久島マルシェ

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「はたらく島人」 (株)やわら香

起業・事業拡大・雇用創出した事業者さんにインタビュー

抽出したブレスチップ

森の恵みを活かし つくり また活かす

屋久島で育った木は屋久島で活かす。“課題が多い人工林の森”を解決するために始まった「やわら香」の精油づくり。その精油を使ったアロマトリートメントは、爽やかな香りのする地杉でできた建物の中で施され、人々は天然の香りという恵みを受け取ります。
この会社を率いるのは社長の堀内直哉さんと、和のアロマセラピストである渡辺優子さん。堀内さんが精油作りの原料加工から抽出作業一連を担い、渡辺さんは、出来上がった精油をどんな商品に仕上げて販売するか、どのように施術に取り入れるかなど5名の女性スタッフと相談しながらお客様に届ける役割です。
「やわら香」により森から受けたバトンが、私たちに届くまでを知ることとなりました。

 

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左 堀内 直哉さん (株)やわら香代表取締役
屋久島町出身・屋久島山岳ガイド歴約20年
右 渡辺 優子さん (株)やわら香取締役
愛知県出身・雑貨デザイナーを経てセラピストに

お話を聞かせていただいた場所は、「やわら香」の施術を受けられる別棟「s.p.a.Kioku」。こちらも建物やテーブル、椅子はすべて地杉で作られたものだそうです。よく見ると、やさしい肌のような質感。そんな小さなことから「なんかいい!」という気持ちが、ここに訪れた人には生まれるのでしょう。

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■抽出した蒸留液。ビーカーの中でオイルとアロマウォーターに分離する。原料により抽出成分の含有率が違うため、抽出釜の温度を微調整。

 

つくる人と活かす人が出会い、歯車はまわりだす

もともと屋久島で山岳ガイドをしていた堀内さん。当時、大学の先生やいろいろな職業の専門家を山に案内することもあり、森に関することなど専門的なお話を聞いていました。自然について学んでいく中で、森の香り物質「フィトンチッド」の効果の論文を読み、森の魅力や香りについて山の中でも考えるようになります。
一方、一級建築士である叔父が運営に関わり堀内さんもメンバーである「屋久島大屋根の会」では、使われない地元の木材を建築材として使うなど人工林が荒れてきている課題解決のため、“島の木材が現代でも活躍できるようにしよう”という活動をしていました。森の整備をする時に出る間伐材を原料にした「香り」づくりも活動の一環となり、堀内さんは精油の試験抽出や原料の加工方法など専門家からのアドバイスをいただきつつも、ほぼ独学で始めることとなりました。そんな時、叔父の息子さんの結婚により、東京の会社「あきゅらいず美養品」と御縁ができます。
屋久島の「森」と東京の「美」がつながり、屋久島の森の課題を「香り」という1つのツールとして解決する循環型モデルの拠点を、屋久島につくることとなりました。
しかし、商品ができても活かす人が見つからず、スタートが切れない状態でした。

 その頃、愛知県でボディケアのセラピストをしていた優子さん。ずっと好きだった屋久島に住む決意を書いたブログが「あきゅらいず美養品」の方の目にとまり、堀内さんが作られた精油を活かす役割を担うことになります。こうして繋がった歯車は「やわら香」設立に向けて動き始めました。

 

活動のベースは森づくり

堀内さん 自分は屋久島で育ち、屋久島の問題解決に取り組んできました。戦後の杉の植林に関しても、人の暮らしに役立つために行われたものじゃないですか。ところが、そこから材を運び出すコストが確保できないことや、地権者が高齢になって森の手入れができないという問題がありました。さらに外せない問題があって、自然は本物なのに、お土産ひとつをとっても屋久島で作られているものって少ないじゃないですか。本物じゃないなって思うんです。なので新しいものを生み出すために何かを犠牲にするのではなく、今の屋久島が抱えている課題を解決しながら新しい価値を生み出していくべきだと思いました。
そのために、シルバー人材の活用や森林保全の事業の柱を持っているNPOと共に地権者の方にヒアリングをし、森の現状を確認しに森の調査に入りました。土地も広く、境界線もわからないほどの荒れ放題です。そんな森が太陽の光を浴びられるように、どこをどのくらい間伐すれば木々は太く成長していくか、またどの木を生かしていくかを考える作業をします。
その考えたプランに基づいて森を生き返らせていきます。そこで出た間伐材はNPOによって「やわら香」に併設している工場へ運ばれチップ状に加工し、“水蒸気蒸留法”で香りの元となる精油を抽出していきます。

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■「ブレスチップ」精油を抽出した後のもの。こちらは杉。天日干しして消臭剤にしたり、お茶として店頭に並ぶ。

 

森で起きていることをやわらかく伝える

渡辺さん   森づくりという屋久島の人工林の整備がベースなのですが、抽出した精油を私たちがどううまく活用するかということが大切だと思っています。香りというものは人の心が動く時の『なんかいい』や『気持ちいい』という、理屈じゃない感情にも働きかけるチカラがあるので。それは「やわら香」の建物や、精油を商品にするための梱包にも反映させています。精油を使う人がいないと循環型とは言えません。「やわら香」で過ごす時間を通して、屋久島の森をつくっていくことにも興味を持ってもらえるように、さり気なく伝えていくことが女子スタッフの役目ですね。

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■「s.p.a.Kioku」施術を受けながら、窓の外の緑や雨のしずくを眺めることができるように建物がデザインされている。

 

みんなが集まるという時間そのものが大事

渡辺さん 1日の仕事の流れが職種で違うため、スタッフ会議を週に1回1時間やります。つくる側から活かす側で「森づくりへのバトン」を繋ぐこのミーティングは「自分だったらどうだろう?」と課題を自分に置き換えて考えたりする時間としてすごく重要だなぁと。

堀内さん 「屋久島の森づくりに繋がる仕事をしている」という意識があるのとないのでは全然違うので、雇用していく段階で軸をしっかり伝えます。本当に意識を向けるべきお客様や屋久島の森づくりのことを考えていけるように、「なぜそのように思うのか」を考えるようにして、意見を自由に言い合えることを大切にしています。
また、自分で判断することが得意じゃない人もいるので、判断するための指標を伝え、権限は経営者側が全て抱え込むわけではなく、スタッフに権限をゆだねられるところは任せています。

渡辺さん のびのび仕事ができるようによくスタッフに話すのは、“何か問題が起きた時は必ずフォローするからお客様のためになると思ったことは思い切ってやっていいよ”ということです。仕事という場でも自分らしく、やりがいや楽しさを感じながら働いてもらえる環境でありたいです。

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前例のないことに取り組んできた今

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■ファクトリーエリアにある抽出釜
鹿児島に抽出器をつくる技術を残したいという思いで、抽出釜を作ったことのある職人さんに設計をお願いし、抽出器を作ったことのない職人さんに制作をお願いした。

堀内さん 最初は工場もショップもなく「屋久島大屋根の会」の事務所の一角を仕事が終わった後に借りて、試験的な精油の抽出をずっと続けていました。ポリタンクを担いで川に水を汲みに行き、背負ってきては抽出釜の中に入れてというように、新しい原料の抽出を一回一回やっていきました。
同じようなことをやっている方々はいますが、そのやり方をそのまま屋久島に持ってきてうまくいくなんて保証はなかったです。
原料を確保する仕組み作りや原料を実際にどう加工するか、抽出の方法など毎日試行錯誤していました。自分たちで動かせる範囲で今までやってきましたが、海外で「やわら香」の精油が使われたり、県と森づくりの事業を取り組むようになるなど、少しずつ違うところと繋がってきていて広がりを感じています。

渡辺さん 身近なものの良さは、身近じゃない人が気づくことによって気づいたりします。外の人が認めると、屋久島の良さをより深く、島の人々が気づくきっかけになるといいなと思います。

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■楠川前岳など白谷雲水峡にも流れる山系の水などを用いて抽出する。

 

これからのやわら香

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■「やわら香」の店内では原料から精油になるまでを知ることができる。地杉精油の販売のほか「和のアロマスプレーづくり」や「フットケア講座」の体験も。

精油づくり以外にも、精油を使うためのアロマランプや雑貨、間伐材を利用したインテリア雑貨などを展開していきます。また、ショップやセラピストの方々と「パートナー制度」を設けて、製品のことだけではなく、「森づくり」の仕組みまで伝えていただきます。そうやって広がった“輪”で、「やわら香」の製品の暮らしへの取り入れ方のバリエーションが増えたら面白いと思います。もちろん全ては“循環”がキーワードです。
これからも活動していく上で大事なことは、森の問題が起きている地域に携わる時に、そこに暮らす若い世代と年長の世代の人々が、森の現状に気づき、共に関わっていただけるかというところです。
また、年長の世代の人たちの知識や体験を、自分たちの世代が勉強してそれを伝える…そんな役割を担っていこうと思っています。

 

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「やわら香」から始まった“循環する森づくり”は屋久島だけの効果ではなく県から国へ、その価値や暮らし方の提案はさらに海外へと向けていくそうです。そんな「やわら香」のショップ店内のディスプレイは、倒木更新(老いた木などが倒れたところに太陽の光が当たり、倒木に着生した新しい芽が育つこと)をイメージしてつくられています。手にとった精油には、活き活きとした森になることを望むスタッフの想いが詰まっているのだと感じました。

 

_NIK9735小 株式会社やわら香
 2012年8月設立。「和の香り」という意味の社名。海外産の精油が多い中、サロンで使っている精油はすべて国産のもの。ショップを併設し、オリジナル精油の販売やワークショップも行われる。また、定期的に開催している『やわら香探検隊』では堀内さんのガイドにより精油原料の森を散策するなど、人も自然も本物と触れ合う時間をもつ。森づくりの取り組みが県に評価され、現在、農林普及課と共に森づくり事業を進める。

 

 堀内さんのとある1日

タイムテーブル

 渡辺さんのとある1日

タイムテーブル

 

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